食い意地張ってるジビエ屋さんの経営日記

ジビエの販売、加工品製造、利活用コンサル、処理場の運営などをする会社を経営しています。現場の視点で野生鳥獣肉について書いています。

ジビエ認証制度に関して

野生鳥獣肉の活用を推進するために、農水省が品質を保証するジビエ認証制度を創設する。という報道がありました。

 

農林水産省がジビエ(野生鳥獣肉)の活用を促進しようと、品質を保証する認証制度を創設し、今年度中に運用を開始することが24日、分かった。捕獲場所や処理加工施設などを表示して肉の安全性を保証するのが目的だ。また、猟師が減少傾向にあり、シカやイノシシなどによる農作物への被害が高止まりする中、ジビエの流通量を増やすことで有害鳥獣対策を加速させる狙いもある。

「ジビエ」認証制度創設へ 農水省、品質管理と有害鳥獣対策の“二兎”追う(1/2ページ) - 産経ニュース 2017.4.25産経Webより

 

 

認証制度の目的は、
1.野生鳥獣肉の品質、特に安全性を保証すること
2.流通量を増やすこと
とのことです。

 

現状、野生鳥獣肉の処理(捕獲した鳥獣を食品に変えるプロセス)は食肉処理業の営業許可が必要であると食品衛生法で定められています。もちろん、クイージが扱う野生鳥獣肉はどの地域からの食肉であっても、食肉処理業の営業許可を取得している処理場の食肉を取り扱っています。

 

食肉処理業の営業許可だけでは不足している!

食肉処理業はもともとは肉屋さんのための営業許可です。最近の肉屋さんは、カット済みの食肉(ブロック肉)を仕入れ、小分けにして販売することが多いのですが、少し昔の肉屋さんは枝肉と呼ばれる大きなかたまり肉(肉と骨がくっついている状態)を仕入れて店内の処理施設で脱骨解体を行い、ブロック肉を作ってから、小分けにして販売していました。元々の食肉処理業という営業許可は、そういった昔ながらの肉屋さんのための決まり事でした。

野生鳥獣肉の処理場にも適用される食肉処理業の営業許可ですが、野生鳥獣肉の処理場では枝肉という食品を仕入れるのではなく、『と体』と呼ばれる、いわゆる死んだ野生鳥獣そのものを仕入れ、その後の加工を行い食肉生産を行っています。

肉屋さんで仕入れる枝肉は、と場法という法律で決められたプロセスを経て『食品』として仕入れるのに対して、野生鳥獣肉の処理場では、食品ではなく、死んだ生き物を仕入れるという部分が大きな違いです。

と場法の範疇ではなく、さらに食肉処理業の営業許可でもカバーしていない『野生鳥獣のと体に関する品質担保』が必要ということで、各自治体(主に県単位)では自主的なマニュアルやガイドラインなどの決まり事が整備されつつあります。一番初めにできた基準が、平成18年に北海道庁が公開した『エゾシカ衛生処理マニュアル』です。
(もう、10年以上も昔の話ですね...このマニュアルがあるからクイージはエゾシカのビジネスをスタートできたわけです。)

各自治体が独自に作成・公開しているため、記述内容も様々ですし、正しく処理を行っていることを第三者が確認する『認証』だったり、単純に『ガイドライン』だったりと、基準のもつ強さも違います。

そんな中、全国基準として厚生労働省が『ガイドライン』を発表したのが平成27年で、これが初めてできた全国統一基準となります。

厚生労働省が作成したガイドラインを踏まえて、全国版の認証制度にすることは意義のあることだと思っています。

 

認証制度の導入だけではなく、法律違反を取り締まる仕組みが必要

野生鳥獣の肉を生産し販売するには、認証やガイドラインを守ることは重要ですが、食品衛生法の遵守はその前提であり、最低限必要なことなのですが、昔ながらの文化として、狩猟者は捕獲した鳥獣肉を山分けする文化があり、その延長線に、狩猟者が近隣の飲食店に販売しているという事例が多く残っています。さらには、最近のジビエブームもあり、狩猟者が遠く離れた都会の飲食店に野生鳥獣肉を販売していることもあります。

その取引の多くは、上記のガイドラインや自治体の独自認証制度には準拠していません。さらに、食品衛生法の食肉処理業の営業許可もない取引も存在します。猟期になると狩猟者から買い付けを行い、飲食店や肉屋に仲介するなんてビジネスもあります。野外で解体したシカやイノシシのブロック肉をビニール袋と段ボールに詰めて、近くのコンビニエンスストアから冷蔵宅配便で仲介業者に送ってしまう...これはさすがに、法律違反です。

認証制度を導入して、ジビエ食肉処理業の営業許可を持っている処理場の品質管理レベルをあげる取り組みを進めるとともに、こういった違反取引の取り締まりを行うことが健全な市場の形成につながると思っています。

 

 さて、認証制度の普及で流通量は増えるのか?

認証制度を普及する目的のひとつは野生鳥獣肉の流通量拡大でした。認証された野生鳥獣肉であれば、より需要が増えることを期待しているのだと思いますが、流通量の拡大に関しては、疑問が残っています。

全国版の認証制度の整備はレストランや小売店が求めるニーズの一つではありますが、クイージの卸事業の前線で最も大きいニーズは野生鳥獣肉を安く・安定的に出荷することだと感じています。

飲食店からの需要が広がっていく中で、今の課題は安く・安定的に供給できる地域の確保にあります。相手が野生動物で、自然から得られるものですので、ひとつの地域で今以上に捕獲を進めて供給量を拡大するには限界があります。また、捕獲する地域を拡大するにも、拡大した地域の狩猟者や関係者との信頼関係も必要となり、すぐに拡大できるものではありません。

認証制度の普及も一つのニーズではあるので、進めることはよいことですが、もっと大きい需要側のニーズと、ニーズを満たすために必要なことを見極め、対策することが流通量の拡大につながると思います。